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ハピネス

2013年03月21日
桐野夏生の「ハピネス」(光文社刊)を読了しました。雑誌VERYに連載されてた小説です。
<引用開始>
三十三歳の岩見有紗は、東京の湾岸地区にそびえ立つタワーマンションに、三歳二カ月の娘と暮らしている。結婚前からの憧れのタワマンだ。
おしゃれなママたちのグループにも入った。そのリーダー的な存在は、才色兼備の元キャビンアテンダントで、夫は一流出版社に勤めるいぶママ。
他に、同じく一流会社に勤める夫を持つ真恋ママ、芽玖ママ。その三人とも分譲の部屋。しかし有紗は賃貸。そしてもう一人、駅前の普通のマンションに住む美雨ママ。
彼女は垢抜けない格好をしているが、顔やスタイルがいいのでいぶママに気に入られたようだ。
ある日の集まりの後、有紗は美雨ママに飲みに行こうと誘われる。有紗はほかのママたちのことが気になるが、美雨ママは、あっちはあっちで遊んでいる、自分たちはただの公園要員だと言われる。
有紗は、みんなには夫は海外勤務と話しているが、隠していることがいくつもあった。
そして、美雨ママは、有紗がのけぞるような衝撃の告白をするのだった……。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8F%E3%83%94%E3%83%8D%E3%82%B9-%E6%A1%90%E9%87%8E-%E5%A4%8F%E7%94%9F/dp/4334928692
<引用終了>
VERYなんて雑誌、そういえばあったな。光文社ってJJのですよね。ちなみにJJって「女性自身」の略。略称をそのまま新雑誌のタイトルにしたそう。

桐野夏生を読むのは「東京島」以来。「OUT」など、女性の生理を上手に描く作家という印象です。本作でもそのあたりが遺憾なく発揮されています。

湾岸地区って、豊洲のこと。そこに暮らすママたち、いわゆるママ友が沢山出てきます。
にっこり笑って握手しながら、空いている手で互いを抓ろうとしている様。男の私には想像しえない世界が描かれています。人付き合いは男も大変だけど、女子の場合、独特の気詰まりな人間関係が生まれることありますね。もう、言葉の選び方ひとつにも細心の注意を払わないといけないといいますかね。
「結婚は打算から始まり、見栄の衣をまとった」と見出しに出てきます。
この、余計な装いのために本来はやらなくていい苦労を、殆どの登場人物がしてしまうのが本書です。

いや、正確には一人だけ、自分に正直に率直に生きているヒロインも出てきます。
彼女が、虚飾の衣を纏った他の人に様々な波紋を広げていく役どころです。いわゆる「トリックスター」というやつだ。いみじくも作中で「深川の土屋アンナだね」なんて形容される箇所があって、うまいこというなと感心しました。
この場合、「下妻物語」に出てくる土屋アンナという感じですね。

最初は読んでて苦痛だったんです。豊洲の高層マンションに住んでて、小奇麗な格好して、専業主婦で、幼児のお受験のみに執心して、見栄えばかり気にするママ友ばかり出てきて、お腹一杯になりかけました。スノビッシュで俗物で、幼稚園から慶応か青学に子供入れれば、人生の目的達成しえたようなつまらない人たちが描かれていたので。

ところが、誰しも裏がある。他人に言えない家庭の事情がある。第三者から見ればなんでもないことでも、当人は極めて深刻な問題を抱えていると思わせている諸々がある。隣の芝生は青く見える、ってやつですね。

私は殆どシガラミのない人間だけど、人付き合い、特に近所と親戚付き合いって気疲れすることあるなと思い出しました。でも、わかるときが来る。
そういう諸々、気疲れするようなことが実は不幸や災厄ばかりでもないんだってことに。深いところでは幸福に直結しているんだっていうことにです。

考え方ひとつ、視点ひとつで、直近に幸福が転がっていることに気づく。
そんなことを考えさせられた小説でした。
ご一読をお勧めします。

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