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俺たちに偏差値はない。

2013年03月24日
福澤徹三の「俺たちに偏差値はない。ガチバカ高校リターンズ」(徳間書店)読了しました。
<引用開始>
東京に住む高校生・悠太は、30年以上前の1979年にタイムスリップしてしまった。しかも、場所は北九州。なぜか、父親・剛志郎として高校の入学式にゆくはめになる。しこしそこはリーゼントとパンチパーマの巣窟で、教師も生徒を容赦なく殴りつける。携帯もパソコンもゲームもない世界で、悠太は昭和の北九州でどうやって生きてゆくのか。そして、平成の今に戻ることができるのか!?
http://www.tokuma.jp/book/bungei/4ffa305f3061306b504f5dee5024306f306a30443002
<引用終了>
タイムスリップものはよくありますが、書き上げるのにこれだけ難しい設定はありません。過去に戻るという状況設定が多いのだけれど、ただ当時の風俗や世相を忠実に描くだけではダメなんです。それにくわえてその時代の雰囲気を読み手によく納得させるものでなければなりません。その点で、著者の福澤徹三は1962年生まれで私の世代に近い。そういえばそうだったと思わせることが数多く出てきて、楽しく読むことができました。

それにしても当時の私たちはどうやってコミュニケートしてきたんだろう、と思う。
携帯もメールもないあの頃、家に電話するしかなかったけれど相手が居ない場合は、それ以外の人と会話しなければならない。社会とか世間との最初の接触ですね。それは大きなハードルであったのだけれど、常識とか言葉遣いとか気遣いとか、いろいろ実地で学んだような気がします。無論、ときには高い授業料を払ってきました。電話一本かけるのにも少しの覚悟が要りましたっけ。ただ、ひとつひとつのやり取りには濃密な気配もありましたね。

タイムスリップものは読み始めが楽しいが、最後にはセンチメンタルになる。現代が過去からの積み重ねであるにも関わらず、過去に出会ったモノとかヒトは現代では殆どないことに気づくからでしょうね。戻る際に置いていくものは、決して持ち帰れないのだと悟るその寂しさ。

本作の主人公は、それに抗おうとします。自分の感じたことや行動を未来に何とか持ち込めないかと考えてあることをします。それは読んでからのお楽しみ。

ご一読をお勧めします。

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