« 正義を装う | トップページ | 上がるハードル »

弁護士探偵~天使の分け前

2013年03月29日
法坂一広の「弁護士探偵~天使の分け前」(宝島社)を読了しました。2011のこのミス大賞。
<引用開始>
第10回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。「法曹関係の圧倒的ディテール、そして司法と検察、弁護側の馴れ合いを糾弾する作者の筆致が、実に素晴らしい。(茶木則雄)」と選考委員も絶賛の、現役弁護士が描く法曹ミステリーです。舞台は福岡。母子殺害事件の被告人を信じた弁護士の「私」は無罪を主張するが、裁判所は聞く耳を持たない。被告人を救おうとした「私」は業務を一年間停止する処分を受ける。復帰後、別居中の夫に生活費の請求をしたいという美女の依頼を受けるが、連続する殺人事件に巻き込まれていく…。
http://www.amazon.co.jp/%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E6%8E%A2%E5%81%B5%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E5%A4%A9%E4%BD%BF%E3%81%AE%E5%88%86%E3%81%91%E5%89%8D-%E3%80%8E%E3%81%93%E3%81%AE%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%80%8F%E5%A4%A7%E8%B3%9E%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E6%B3%95%E5%9D%82-%E4%B8%80%E5%BA%83/dp/product-description/4796688145/ref=dp_proddesc_0?ie=UTF8&n=465392&s=books
<引用終了>
説明にもあるとおり、著者は現役の弁護士さんです。今年で齢40歳で本作がデビュー作品というから後世おそるべしです。
法曹職に就いているだけに、弁護士業務や裁判所、検事・判事の言動など興味深い情報が一杯あります。それだけでも読む価値はありますが「このミス」で大賞受賞しただけにミステリーとしてもなかなか面白いと感じました。
ただ、初めての小説ということで個人的には気になるところが二点ほどあります。
ひとつは、同時代感を出そうとしたのでしょうが流行りものの固有名詞を頻繁に作中に登場させているところ。「ミスチル」「ホークス」「秋山監督」「太陽にほえろ!」「ジーパン刑事」「沖雅也」など等。
こうした名詞の使い方は難しい。ある時代を活写したものとしての効果を狙っているのだろうが、後世で読み返されたら??となってしまうこともあります。三島由紀夫も文章作法としてこのことを戒めていました。

既に評価が定まっていて、時代の枠にはまらないようなものなら良いのですが「ミスチル」など、この先どう受け取られるのかわかりません。小説に用いる場合、固有名詞は慎重に選んで欲しいところ。第一作だから仕方が無いのだけど。

もうひとつは語り口です。本作は探偵のひとり語りのスタイルです。それはいいのですが、事物を淡々と綴るのではなく、減らず口が多いんですね。

例えばこんな感じ。
〝外見には、けちのつけようはなさそうだ。しかし私は、この男にドンペリの空き瓶以上の価値は見出せなかった”(4p)
こんな感じの比ゆとか形容が、そこかしこに出てくるんです。こういう好きか嫌いかで、評価がかなり分かれてしまうところですね。
嫌味といえば、そうも読めてしまうかもしれない。

これは、分かる人には分かるのですがハードボイルド小説、チャンドラーとかミッキー・スピレーンのものを意識して描かれているんです。
フィリップ・マーロウとかマイク・ハマーといった探偵が主人公のやつです。
読んだ印象では、ミッキー・スピレーン「裁くのは俺だ」が最も近いかな。

たまたま読んだことがあるのでわかったけど、そういう前提がない人が読んだら、おちゃらけた印象を持ってしまうことがあるでしょう。
これも描き方を多少抑制することで、印象は格段に上がるだろうと思いました。
第二作「弁護士探偵~完全黙秘の女」が最近出ていますので今から読んで確認します。
ご一読をお勧めします。

« 正義を装う | トップページ | 上がるハードル »

2021年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
無料ブログはココログ