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公開処刑人 森のくまさん

2013年05月28日
堀内公太郎著「公開処刑人 森のくまさん」(宝島社文庫)を読了しました。
<引用開始>
童謡を歌いながら、アイツがやって来る!ネット上に実名を晒された悪辣なレイプ犯や鬼畜なキャバ嬢が、次々に処刑されていく――。掲示板に犯行声明を出す「森のくまさん」を名乗るシリアル・キラーの正体は!?第9回『このミステリーがすごい!』大賞最終候補作に、全面的に手を入れて生まれ変わった、編集部推薦の「隠し玉」です。
http://tkj.jp/book/?cd=72007601
<引用終了>
「このミステリーがすごい!」大賞・優秀賞は全て読んでいますが、佳作に該当する「隠し玉」は未読のものがいくつかあります。この小説もそのなかのひとつ。
「隠し玉」とは、大賞や優秀賞とするにはいろいろ綻びがあり、推せないがなんとなく選者の気になる、引っかかる作品を特別賞として出版するものです。
当然、大幅な改訂ないし書き直しがあり、応募時とは似ても似つかない内容になることもありますが原型の応募作を私たちは読めないので、特に問題はないのです。
それに、大賞のなかには『四日間の奇蹟』(浅倉卓弥)のように純粋なミステリーとは言いがたいものもあり、さらに読み手のこちら側の好き嫌いもあります。大賞・優秀賞をとったからといって面白いとは限らないものもある。(『四日間の奇蹟』はたいへん感動的な作品です。ただミステリーとしてはどうかと思いました)

その点で隠し玉に選ばれる小説は、プロの書き手の注文を受けて推敲を重ねているので、殆どが面白くあっという間に読みきれるものばかりです。
上甲宣之「そのケータイはXX(エクスクロス)で」、森川楓子「林檎と蛇のゲーム」、七尾与史「死亡フラグが立ちました!」など等。

これは正体不明の殺人鬼が、ネット掲示板に出てくる悪逆非道な連中を一人ひとり、殺していくという話です。しかし、単なるサイコキラーものに留まらず、犯人に全く無関係な人が次々殺されていく。そこに女子高生の虐めとインターネット掲示板、女子大生の恋愛とその家族の苦闘などがよく書かれています。かなり推敲を重ねたんでしょうね。ミステリーとしては半分くらい読んだ時点で、真犯人がわかりましたが十分面白く読めました。細部のディテールはやや粗い。例えば殺人に使われた拳銃の発砲数や、都合のよい事件関係者同士の遭遇など、まだまだ気をつけてもらいたいところはあります。それでも全体としては物語のスピードに持っていかれる感じで最後まで楽しく読むことができました。

それにしても、こういうサイコ的な人格は再生産が容易ですね。身震いする思いです。
ご一読をお勧めします。

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