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脱ニッポン富国論 2014年02月21日

山田順の新刊「脱ニッポン富国論~『人材フライト』が日本を救う」(文春新書)を読了しました。
<引用開始>
彼らは、なぜ日本を見限ったのか?――現在、日本人の海外移住者は118万人に上る。中でも急増中なのがミャンマー、マレーシア、シンガポールといった新興アジア。富裕層はもちろん、中小企業経営者、金融専門家、IT起業家、学生など多くの日本人が移住している。著者が、かつて描いた「資産フライト」は第二ステージ「人材フライト」を迎えているのである。例えば、年収1億円の人がシンガポールに移ると日本との税金の差額は、2540万円とか。あるいは日本人の不動産投資が盛んなマレーシアには住民税・相続税がない。こういった節税、投資、起業に有利なことは知られているが、グローバル教育のレベルが高い現地校へ母子留学とか、富裕層の暮らしやすい住環境をはじめとする生活のクォリティ等、「新移民」たちの目的は様々。これらのカネ・モノ・ヒトの流出の実態を描きながら、彼らの稼いだ在外マネーを日本に還流する方法を提起する。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166609512
<引用終了>
山田順は、光文社の編集者だった人。これまでも出版業界の暗い未来などを描いた本をいくつも出しています。
本書は、資産とともに日本を出て行く人たちにスポットをあてて、現在の日本の正しい状況と採るべき進路について様々なデータから論及しています。
共感できるところも、反論したい点もありましたが主張するところの殆どは理解できるものです。

また、私たちが漠然と思っていた「日本は輸出によって成り立っている」という印象が実態と如何に違うかを解説していました。彼によると、GDPにおける輸出の割合は10%台に満たないことを指摘。日本の多くの産業が、いわば地産地消、内需を前提として成り立っていることが理解できました。

そして貿易収支の問題。今の日本の貿易収支は赤字ですが、これ自体はおそるるに当たらないと主張します。
何故なら、輸出した金額から輸入した金額を差し引いた額のプラスマイナスを示しているだけの数字が貿易収支であり、会社や家計がいう赤字とは性質が違うからです。本来大事な収支は経常収支。これは、貿易に加えてサービス・所得・経常移転の各収支を合わせた数字で、これで日本はまだ黒字です。
この黒字の少なからぬ部分を、海外への投資によるリターンが支えていると解説しており、つまり日本は「投資立国」として国家の財政を支えている現状がわかります。

著者は主張します。移民を受け入れること(日本人になってもらうこと)と、海外で活動したリターンを国内に還流させる仕組みを用意せよ、と。

スポーツなどの特定分野で、海外からの人材で成り立たせているところもある。しかし社会全体としては、在留しようとする外国人に冷淡な日本。そこからの変換を著者は訴えています。たしかにヘイトスピーチなど、排外的な主張が声高に聞こえる社会に、別の場所で「おもてなし」などとにこやかに言われても鼻白みます。旅行客は歓迎して、在住しようという人を弾こうとするのはダブスタである、と。また、日本を出ていった邦人に対しても裏切り者のごとく睨みつける姿勢がある。
この根強い感情を払拭していかなければならない、と。

もっとも、移民に関しては、コスト対策で使われないように慎重にやらなければいけない。非正規・格差・不安定。著者はさらっと流しているが、ここに深刻な問題が横たわっていることを忘れないようにしないとなりません。最低賃金を上げるとか、守らない企業に厳しい処置を与えるとかが必要だと私は思う。このあたりで著者は、少し経営者よりのスタンスなのが残念です。

海外での企業活動のリターンを国内に還流させる仕組みを進めよという主張は、共感できる。

ご一読をお勧めします。

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